サムエル記第二3章 「ダビデの巧作」

「それは、あなたが私に会いに来るときは、まずサウルの娘ミカルを連れて来ること、そうでなければ私に会えないということだ。」サムエル記第二3:13

くぅ~ママのちょっと一言
この章では勢力争いの中で、登場人物の心の動きが交錯します。サウル王家の司令官のアブネル、サウルの子であるイシュ・ボシェト、ダビデの家臣のヨアブ、そしてダビデ。それぞれの思惑がうごめく3章です。ダビデにとって大切な取引の際に神の導きを求める言葉が出ていない事が気になります。章の最後にヨアブの裁きについて「自分は王であるがまだ力がない」というダビデの言葉は謙遜なようで、神の前にへりくだる謙虚さとは違うように思います。なにしろダビデは2人の妻のほか4人の女性を妻として、その上、王になるための大義名分のためにサウルの娘のミカルも妻に呼び寄せたのですから。ダビデはこれらの妻の子どもたちによってこの先苦しむことになるのです。

聖書要約
ヘブロンで生まれたダビデの息子
ダビデの息子は以下の通り。長男アムノン(母はアヒノアム)、次男キルアブ(母はナバルの未亡人アビガイル)、三男アブサロム(母はマアカ)、四男アドニヤ(母はハギト)、五男シェフトヤ(母はアビタル)、六男イトレアム(母はエグラ)
アブネル、ダビデの側につく
サウル王家では軍の司令官であるアブネルが実権を握るようになります。しかしアブネルはサウルの子であるイシュ・ボシェトに父の側女との関係を指摘されます。アブネルはこれを不服として、これまでサウル側に忠誠を尽くしてきたのですが、これからはダビデが王として君臨されることを支えるとイシュ・ボシェトの元を離れていきました。イシュ・ボシェトは言い返す言葉もありませんでした。アブネルはダビデに全イスラエルの王となれるように計らうことを提案します。そして自分も最高司令官としての地位を要求しました。ダビデはサウルの娘であり、かつての妻であるミカルを連れてくることを要求します。ダビデはそのことをイシュ・ボシェトにも要求します。ミカルはサウルによって別の男性と結婚させられていましたが、イシュ・ボシェトに命令によって男性から離され、アブネルと共にダビデの元に行きました。アブネルはダビデの歓待を受け、話が成立して帰っていきました。
アブネル、暗殺される
ダビデがアブネルを送り出した後、多くの戦利品を携えてヨアブが帰って来ました。アブネルがダビデの歓待を受けたことを聞き、「アブネルは王を欺く為にきたのだ」と、王に進言します。もとよりヨアブは弟をアブネルに殺されているのです。ヨアブはアブネルを追い、城門の中に誘い込んで暗殺します。ダビデはこのことを後で知って大いに悲しみ、アブネルのために喪に服し、手厚く葬りました。またイスラエルの偉大な将軍アブネルの死を悼む歌を詠みました。そのようなダビデを見て、全イスラエルはアブネルの暗殺はダビデの意図によるものではないことを認めました。ヨアブに対してダビデは呪いの言葉を発していますが、裁く事はしませんでした。それは自分は王とは言え、まだ力がないからとダビデは言いました。また神が報いてくださることを信じていたためでした。